Monday, May 20, 2019

Visit Shenzhen! 深セン視察(2019年04月)Part 06-中国のシリコンバレー

Shenzhen as "Silicon Valley" in China


Shenzhen as "Silicon Valley" in China
中国のシリコンバレー、深セン(深圳)

2019年04月の深セン(深圳)の視察旅行の記事第6弾です。

前回(第5弾)は、深センの世界のハイテク企業の下請け製造拠点、つまりハードウェアのシリコンバレーとしての特徴を見て参りました。

今回は、ソフトウェア、IT技術の面も含めた、新興企業のスタートアップ環境のある街としての深セン、つまり、中国のシリコンバレーとしての深センについて書いてみました。


世界のユニコーン企業(巨大スタートアップ企業)


ところで、ユニコーン企業と呼ばれる企業をご存知でしょうか?

未上場のベンチャー企業で、企業価値が10億ドル以上と評価されるものをユニコーン企業と言うそうです。創業間もないのに企業価値が高い企業は稀です。そこから、「噂には聞くけど、だれも見たことがない。」という、ギリシャ神話の伝説の一角獣のような存在としてユニコーンの名前が付けられたそうです。

一言で言うと、ユニコーン企業とは巨大スタートアップ企業ですね。

ユニコーン企業と呼ばれる企業の条件は以下の通りだそうです。

  • 企業価値が10億ドル(日本円で約1,100億円)以上
  • 起業・設立から10年以内(であることが多い)
  • 非上場
  • テクノロジー関連企業(である場合が多い)

さて、世界のユニコーン企業について最新の情報を集めてみました。The CB Insights Teamという世界のユニコーン企業を調査している団体によると、現在(2019年05月)、世界にはユニコーン企業が346社もあるそうです。その内訳は以下の通りです。

  • アメリカ:172社(49.7%)
  • 中国:89社(25.7%)
  • イギリス:17社(4.9%)
  • インド:16社(4.6%)
  • 韓国:8社
  • ドイツ:8社
  • イスラエル:4社
  • インドネシア:4社
  • フランス:4社
  • スイス:3社
  • オーストラリア:2社
  • コロンビア:2社
  • ブラジル:2社
  • 香港:2社
  • 南アフリカ:2社
  • エストニア:1社
  • カナダ:1社
  • シンガポール:1社
  • スウェーデン:1社
  • スペイン:1社
  • ナイジェリア:1社
  • 日本:1社(0.3%)
  • フィリピン:1社
  • ポルトガル:1社
  • マルタ:1社
  • ルクセンブルグ:1社

スタートアップと言っても、いきなり世界展開するわけではありません。そのため、国内マーケットが大きい国ほどユニコーン企業の出現に有利だと思われます。それもあってか、アメリカと中国は、非常に多く、巨大なスタートアップが乱立している現状が見て取れます。

一方で、GDP世界第3位の日本はたったの1社で、GDP世界第4位のドイツの8社にも大きく後れを取ってしまっています。GDPのもっと小さな国にも、ユニコーン企業の多い国があるのでデータだけを見ると、日本は産業構造的に何か問題があるのかもしれません。ただ、大企業の多角化によって、ユニコーン企業の役目を果たす場合もあるので、ユニコーン企業が少ないから悪いというわけでもないのかもしれません。


中国のユニコーン企業


中国の最新のユニコーン企業のうち50億ドル(約5,500億円)以上の企業価値のある企業13社をリストアップしてみました。

Company Billion $  Category
Toutiao (Bytedance) 75 Digital Media/ AI
Didi Chuxing 56 On-Demand
Bitmain Technologies 12 Blockchain
DJI Innovations 10 Hardware
Guazi (Chehaoduo) 9 eCommerce/Marketplace
Manbang Group 6 Supply chain & Logistics
Lianjia (Homelink) 6 eCommerce/Marketplace
EasyHome 6 Retail
Hellobike 5 Travel
UBTECH Robotics 5 Robotics
United Imaging Healthcare 5 Healthcare
Meizu Technology 5 Hardware
SenseTime 5 Computer Vision/ AI


堂々のトップは日本でも人気のあるSNSのTiktokを展開するBytedanceでした。それから、続いて第2位が中国版のUberともいえる配車アプリのDidi、そして、第4位には深センに本拠地を持つドローンの世界的企業DJIも位置しておりました。

また、中国国内で都市別に見てみると、北京、上海、杭州、深センにユニコーン企業が多いようです。データから見ても、深センはスタートアップが熱い街と言えるようです。


以上のような背景の中、深センのスタートアップが盛んなエリアを視察して参りました。


深セン(深圳)を代表するテンセント(Tencent、腾讯)の本社


深センを代表する企業としてテンセント(Tencent、腾讯)があります。

深セン視察記事第1弾「今なぜ深センなのか」でも既に執筆致しましたように、企業の時価総額は約4,750億米ドル(2019年04月現在)で、世界で第8位、中国では第2位です。日本トップのトヨタ自動車が約1,800億米ドル、韓国トップのサムスン電子が約2,610億米ドルですので、日韓のトップ企業がで合体しても4,400億米ドルと歯が立ちません。

テンセントは一体どのようなビジネスをやっているのでしょう。テンセントをWikipediaで調べてみた結果、以下の通りでした。

1998年に創業して、2004年に香港証券取引所に上場されて、2008年に香港ハンセン株価指数の構成銘柄になっている。
売上高では世界最大のゲーム会社であり、アプリの収益は世界一を誇り、アクティビジョン・ブリザードやユービーアイソフトなど他のゲーム企業の大株主でもある。創業者の馬化騰はアジア1位の富豪にもなっており、時価総額ではアジア最大の企業だったこともある。2017年にはアジアの企業で初めて5000億ドルを突破し、フェイスブックを超えてアップル・グーグル(親会社のアルファベット)・アマゾン・マイクロソフトといった世界五大企業に入っている。このうちグーグルとはクロスライセンスで提携している。
世界最大のPCゲーム「League of Legends」を運営する米ライアットゲームズ社、ギネスワールドレコーズから「最も成功したゲームエンジン」と認められたUnreal Engineで知られる米Epic Games社、世界1位のモバイルゲーム「クラッシュ・オブ・クラン」を運営するスーパーセルの親会社でもあり、また、韓国最大のモバイルチャットアプリ「カカオトーク」を提供する韓国企業カカオ、および韓国最大のモバイルゲーム企業であるネットマーブル(CJグループ)の大株主でもある。テンセントも出資するテスラの自動運転車やAmazon Echoのハッキングを実演してセキュリティ面の脆弱性の修正に協力するホワイトハッカーの活動も行っている。
スカイダンス・プロダクションズなどに出資してハリウッドの映画製作にも携わっており、テンセント・ピクチャーズは漫画やゲームの映画化も手掛けて日本のアニメも製作・配信しているビリビリ動画や日本の漫画を翻訳出版している広州天聞角川動漫にも出資し、絵梦を通じて日本のアニメスタジオの買収や日中合作アニメの制作も行っている。VRの他、AIの研究開発にも力を入れており、テンセントの囲碁プログラム「絶芸」はUEC杯や電聖戦など国際大会で優勝している。また、電子決済でもアリババに匹敵するシェアを誇っている。
中国安徽省の蕪湖市で世界初のエレクトロニック・スポーツによるまちづくりを進めており、ゲーム大学や競技場などを建設している。また、ゲーム内のチーターの約99%を中国が占めるとゲームの開発者が問題視し、テンセントがローカライズを行っている「PUBG」(テンセントはデベロッパーBlueholeで創業者に次ぐ大株主でもある)のチートツールの製作者や販売者は中国当局との協力で2017年時点で120名超も逮捕されている。中国当局とはAIによる警察署の無人化などでも協力している。中国で全国民14億人の格付けのために運用されている社会信用システムをゲーム世界にもテンセントゲームクレジットとして導入しており、模範的なユーザーに特典を与えてチーターやマナーを守らないプレイヤーなどには実名登録されたアカウントにペナルティを与えている。 
(Wikipedia「テンセント」、2019年05月20日現在)

私は、Wechat、WechatPayの会社として知っていました。一方で、私が教えているインドネシアのBINUS大学の学生たちに聞いてみたら、口を揃えて「ゲームの会社」と言っていました。私たちの知らないところで時代はどんどん変化しているのですね。日本のコンテンツ産業も、うかうかしているといつかはこういった力を付けた新興企業に飲み込まれていくのかもしれません・・・。

そんなテンセントの本社を見てみようと、乗り込んで参りました!

とは言っても、本社の前に写真を撮りに行ってきただけです(笑)


Tencent’s headquater!
テンセント(腾讯)の本社

奥に見える上の丸い建物がテンセントの本社です。深セン大学の人たちによると、「テンセントの本社は巨大な電気シェーバーだ」、とのことでした。確かに何故、この形なのでしょう(笑)


Tencent’s headquater!
テンセント(腾讯)の本社

地下鉄の深セン大学駅から歩いて10分ほどで到着しました。

意外とあっさりと来てしまいました。


Tencent’s headquater!
テンセント(腾讯)の本社

自撮り、多めですみません(笑)

警備員ににらまれましたが、ゼスチャーで写真撮りたいと言ったら、大丈夫とでも言うように、優しく対応してくださいました。ミーハーにとっては有り難いです。

ちょうど出勤の時間だったのですが、噂の996(午前9時から午後9時までを週6日間)勤務をしていると思われるテンセントの社員が、レミングス状態でわらわらと歩いているのが見えました。


深セン(深圳)のスタートアップ企業の巣窟


テンセント本社から、深セン大学を挟んで反対側のエリアに、巨大なインキュベーションセンターがあると聞いてやってきました。こちらにはソフトウェア開発のインキュベーションセンターや、スタートアップの拠点となるような場所がたくさんあり、日々いろいろなイベントなどが行われているとのことでした。


Shenzhen Software Industry Base
深センのスタートアップ企業の拠点

この一帯に入った瞬間に雰囲気ががらりと変わり、街並みも全然違いました。さらに、街並みだけでなく、歩いている人もスマートそうでした。

奥に見えるビルもテンセントのビルのようです。


Shenzhen Software Industry Base
深センのスタートアップ企業の拠点

インキュベーションセンターが立ち並んでいるところに入ってみました。


Shenzhen Software Industry Base
深センのスタートアップ企業の拠点

インキュベーションセンターの地図や、参加企業のリストだと思われます。


Shenzhen Software Industry Base
深センのスタートアップ企業の拠点

深センのソフトウェア産業の拠点です。


Shenzhen Software Industry Base
深センのスタートアップ企業の拠点

大きなビルがたくさん建ち並んでいます。その全てがソフトウェア技術のインキュベーションセンターだと考えると、末恐ろしいです。これがユニコーン企業を無数に生み出していく拠点ということなのでしょうか。世界はこれから一体どうなってしまうのか、想像する気を失うほどです。


Shenzhen Software Industry Base
深センのスタートアップ企業の拠点

街並みがお洒落です。マクドナルドのすぐ横などに、ちょっとしたイベントができそうな空間があったり、この一帯がクリエイティブな活動に適した構造になっているように思われます。


Shenzhen Software Industry Base
深センのスタートアップ企業の拠点

スタートアップ企業の仮設オフィスでしょうか。


Shenzhen Software Industry Base
深センのスタートアップ企業の拠点

路上に、この手の建物がたくさんありました。

大雨の中、この一帯を歩いてみましたが、どこも1階はカフェや食堂、上はインキュベーションセンターのようになっているようでした。

カフェは、ちょっとしたイベントスペースとしても使えるような構造になっているところが多かったです。スタートアップ企業が場所を借りて、投資家に対してイベントなどを行ったりするのでしょうか。


深セン(深圳)のスタートアップカフェ


このインキュベーションセンターの一角にあった、最も興味をそそられたカフェに入ってみました。


Inno Valley Coffee, the cafe for startup companies in Shenzhen
深センのスタートアップカフェ、創新谷(创新谷)

スタートアップカフェ、その名も、Inno Valley(創新谷)!

それにしても、奥に見えるテンセントのビルは、ファイナルファンタジーのラストダンジョンみたいにそびえ立っていますね。さすがゲームの会社です(笑)


Inno Valley Coffee, the cafe for startup companies in Shenzhen
深センのスタートアップカフェ、創新谷(创新谷)

深センのカフェはどこへ行っても、おしゃれにできています。


Inno Valley Coffee, the cafe for startup companies in Shenzhen
深センのスタートアップカフェ、創新谷(创新谷)


奥にVIPルームがありました。


Inno Valley Coffee, the cafe for startup companies in Shenzhen
深センのスタートアップカフェ、創新谷(创新谷)

2階には会議室が数部屋ありました。


Inno Valley Coffee, the cafe for startup companies in Shenzhen
深センのスタートアップカフェ、創新谷(创新谷)

ちょうど、スタートアップ関連のありそうなイベントが行われていました。ちなみに、平日の午後5時ごろでした。


Inno Valley Coffee, the cafe for startup companies in Shenzhen
深センのスタートアップカフェ、創新谷(创新谷)

中国語で行われていたので、内容は全く分かりませんでしたが、3人の若者が、何かで表彰されていました。どのようなイベントが行われているのか、カフェの店員に英語で聞いてみたのですが、はにかみながら逃げられてしまいました(笑)


Inno Valley Coffee, the cafe for startup companies in Shenzhen
深センのスタートアップカフェ、創新谷(创新谷)

ソフトウェアのインキュベーションセンターに来て、これほど巨大なスタートアップの拠点があるのか、とまたもや衝撃を受けてしまいました。

東京にも小さく小さくスタートアップ企業が集まっている場所は何ヶ所かあるように見受けられます。しかし、ここまで巨大なインキュベーションセンターが集積しているのはないのではないでしょうか。規模の大きさにはとことん驚きました。

数があれば良いというものでもないとは思うのですが、これだけ集積していると投資家も各スタートアップの状況を見やすいでしょうし、スタートアップしている企業同士でも情報交換などがしやすいのではないかと想像できます。

テンセントなどの巨大企業や、国の政府が大規模に投資をして、また新しい産業を生んでいきます。そしてその中からユニコーン企業のように巨大なスタートアップが生まれ、またお金を生み出します。そこから、また投資にお金が回るようになります。そのような正のフィードバックが効率的に生み出されて、深センから中国の経済がどんどん大きくなっていくのかな、と思えました。新しい時代のエコシステムですね。

日本がだめで、深センが良いとか、そういうことを言いたいのではありません。しかし、仕組みが整ったところにはどんどん投資が集まり、経済が回っていくのは間違いありません。そういう意味では、この深センは、現在非常に良い状態にあるのではないでしょうか。街を歩きながら、深センの勢いを見て、そのように感じました。これからの日本は一体どうあるべきなのでしょうか。


Inno Valley Coffee, the cafe for startup companies in Shenzhen
深センのスタートアップカフェ、創新谷(创新谷)

大雨の中、興奮してずっと歩き続けていたので、気が付いたら全身ビショビショでした。しかし、それ以上に収穫のある時間を過ごすことができました。実際に、この深センの凄まじい勢いを見てしまうと、危機感は膨れ上がるばかりです。



Visit Shenzhen! 深セン視察(2019年04月)まとめ
https://omg-kmg.blogspot.com/2019/05/visit-shenzhen-201904.html