Thursday, May 16, 2019

Visit Shenzhen! 深セン視察(2019年04月)Part 03-本気で電動化する交通

Transportation Fully Powered by Electricity


Transportation Fully Powered by Electricity
本気で電動化する交通

2019年04月の深セン(深圳)の視察旅行の記事第3弾です。

今回は特に、交通の電動化、という視点で見聞をまとめてみました。交通のインフラを本気で電動化し、キャッシュレス決済も含めて、合理的に運用していこうとする姿勢を感じました。また、いろいろと見ていく中で深センは、大きな実験室のように感じたことが個人的には一番の衝撃でした。


中国は深セン(深圳)、そこは空気の美味しい都会だった


This is my first Shenzhen!!
空港から地下鉄に乗り、初めて外に出た深セン!

インドネシアの首都ジャカルタから深センまで中国南方航空の深夜の直行便で飛び、早朝に深センの国際空港から地下鉄で、市内中心部へ。

長い長い旅の果てに、初の中国本土の地上へ出て最初の印象は、

「あれ、空気が美味しい?」

でした。

普段、交通渋滞がひどく、大気汚染もひどいインドネシアの首都ジャカルタで暮らしているせいかもしれません。しかし、外に出て空気を吸っても、見事に嫌な感じがしなかったのです。気になるような排気ガスなどの臭いも感じられませんでした。むしろ清々しく感じました。そして、空気が澄んで見えました(滞在中毎日雨だったので、空は曇っていますが・・・笑)。

中国といえば、日本でも有名なPM2.5に代表されるように大気汚染がひどいというニュースを見聞きしていました。ですから、ある程度は空気の悪さを覚悟しており、マスクも滞在日数分以上に持参しました。ですので、空気が全然汚くないことに対して、拍子抜けというか、正直驚きました。

感覚値で論じても面白みがないので、ウェブサイトで調べた空気の状態を載せてみました。ここでは、現在の各地のPM2.5の数値(2019年05月16日深夜)および48時間以内の推移を載せておきます。


Air quality, in Beijing (China)
空気の質、北京(中国)

Air quality, in Shanghai (China)
空気の質、上海(中国)

Air quality, in Shenzhen (China)
空気の質、深セン(中国)

Air quality, in Singapore
空気の質、シンガポール

Air quality, in Tokyo (Japan)
空気の質、東京(日本)

色分けの評価で見ると、2019年05月16日深夜時点でのPM2.5は、

北京(赤、151)>上海(橙、119)>深セン(黄、78)=シンガポール(黄、59)>東京(緑、18)

の順番でひどいようでした。

データからも、いわゆる大気汚染がひどいと有名な北京や上海とは状況が全然違うようでした。むしろ、深センの空気は、ASEANの中でも格段に環境の良いシンガポールに近いレベルと考えると、やはり思っていた以上に空気が良いことが分かります。

それから、しばらく街を歩いてみました。

すぐに空気が汚くない理由が分かりました(笑)


市内は電気自動車(EV)ばかりだった!


衝撃でした!

交差点で信号を待っているときに、車が近くにいるのに、排気ガスの臭いが全然しないことに気が付きました。そして、自動車の発進時に、エンジン音もなくスーッといなくなってしまったのです。

「もしや!」と思って見てみると、排気口も付いておらず、電気自動車でした。それから、道路を見渡していると、電気自動車がたくさん走っていることに改めて気が付きました。正確には分かりませんが、街中を走るかなりの車が電気自動車でした。田舎者ですみません!しかし、これほどたくさんの電気自動車を見たのは生まれて初めてでした。また、タクシーやバスに至っては見た限りはほぼ全て電気自動車でした。


Taxi driven by electricity (Electric Vehicle) by BYD Auto!!
比亞迪汽車製の電気自動車のタクシー

中国の深センを拠点とする比亞迪汽車(BYD Auto)製の電気駆動のタクシーです。


Bus driven by electricity (Electric Vehicle) by BYD Auto!!
比亞迪汽車製の電気自動車のバス

同じく、中国の深センを拠点とする比亞迪汽車(BYD Auto)製の電気駆動のバスです。


Bus driven by electricity (Electric Vehicle)!!
電気自動車のバス

朝のラッシュ時に、街中にこれほどまでにたくさんバスが走っていても、空気が全然汚れていないように感じるのです。現在住んでいるインドネシアの首都ジャカルタでは、残念ながら、昔ながらの真っ黒なガスを排出するバスなどもまだ数多く走っています。そのため、なるべく外の空気を吸わないようにしています。移動などで仕方なく外にいるときには、必ずマスクを着用するようにしています。それと比べてしまうと、やや極端かもしれませんが、この空気の良さは感動的でした!

もちろん、日本から来られた場合、印象が全然違うかもしれませんので悪しからず・・・。


なお、滞在中にガイドをしてくれた現地友人に教えてもらったのですが、ナンバープレートによって、電気自動車かどうかが判別でき、

緑色のナンバープレート:電気自動車
青色のナンバープレート:ガソリン自動車

となっているそうです。政府への登録の時点で分類が変わるということは、中国政府や深センの地元の政府のやる気・本気度が強く感じられます。


Just normal gasoline-fueled automobiles
ガソリンエンジンの乗用車


小型のバイク(自動二輪)はオール電動化


街中に、BMXのようなサイズの小型のバイク(自動二輪)がたくさん走っています。それらも全て電気駆動の電動自転車のようなのです。


Electric motorcycle!
小型の電動自転車!

電動自転車が小型すぎて、こんなに小さくて大丈夫なのだろうか、とも思いました。しかし、よく考えてみると、自転車のように自分でこぐわけではなく、上に乗っているだけで良いので、使用上、問題はなさそうです。むしろ、小回りが利く分、何かと便利そうです。


Electric motorcycle!
どこもかしこも電動自転車!

どこへ行っても、たくさん走っています(笑)


Electric motorcycle!
みんな大好き電動自転車!

とても小さいバイクなのに、よく二人乗りをしている人たちがいます。可愛いですね(笑)


Electric motorcycle!
地下鉄の出口前で待っているバイクタクシーも電動自転車!

地下鉄の出口前でバイクタクシーがたくさんいました。こちらも皆、電動自転車ですね。


Electric motorcycle + QR code payment
電動自転車とQRコード決済

ちなみに、これらのバイクタクシーの支払いは、やはりQRコード決済でした。首からかける必要があるのかどうなのかはよく分かりませんでしたが、QRコード決済を受け付けている、というお客さんへのアピールなのでしょうか。

決済もスマホを経由して電子的に、そして駆動も電気で行うという、非常に先進的な社会を垣間見てしまいました。もちろん言うまでもなく、技術的には全く難しいことではないはずです。しかしながら、こういった新しいもの・ことを実際に採用し、運用し、住民が利用し、エコシステムとして構築され、基本的なインフラとなって定着しているのを見ると、こういう街で研究開発に没頭したいと思ってしまいます。どれだけ頑張って研究をしても現実で実証試験をしなければ、面白くないではないですか。


自転車シェアリングもQRコード決済でスマートに!


電気自動車や電気バイクとは少し話が違いますが、街の至る所で自転車シェアリングもあります。1元(約18円)で30分、QRコード決済をして、どこでも乗り捨てできるようでした。


Bicycle sharing!
自転車シェアリング!

街の至る所にあるので、地下鉄との組み合わせで、かなり移動範囲が広がります。


Bicycle sharing!
自転車シェアリング!

交差点の一角に乗り捨てられていました。本当にどこにでも置いてありました。


Bicycle sharing + QR code payment
自転車シェアリングとQRコード決済

こちらの鍵の部分にQRコードがついており、これで運用が管理されています。

電気自動車や電気バイクに加え、排出ガスのない交通機関として自転車シェアリングまで整っています。深センの周囲の工場や発電所などでの排出ガスがどの程度ひどいのかは分かりません。しかし、少なくとも都市部の交通機関からの排出ガスは、非常に少ないのだと感じられました。

深センでは、電気自動車、電動自転車、地下鉄(電気)、そして自転車シェアリング(人力)と、排出ガスのない交通手段が勢ぞろいでした。このような交通のインフラを見ても、非常に合理的な社会を形成しているように見受けられました。

なお、自転車シェアリングについては、管理状態が悪くなって乗れなくなってしまった自転車があったり、自転車が余って山積みになっていたり、道路に乗り捨てられていたりと、良くない側面も頻繁に見られました。もう自転車シェアリングに飽きてしまったのかもしれません。しかし、このように思いついた新しいことにどんどん挑戦し、時代に合ったものを取捨選択していくという、合理性とスピード感は今の日本にも必要だと思いました。政府の規制、新しいものを嫌う性格、こういったものを如何にして取っ払っていくのかが、日本の大きな課題ではないかと改めて思いました。

それにしても、深セン滞在中、何を見ていても心からワクワクし、刺激的を感じました。


中国の電気自動車メーカーの圧倒的な存在感


2017年の1年間に、世界で最も電気自動車の販売台数が多かった企業は、この深センに拠点を置く比亞迪汽車(BYD Auto)でした。

私の専門はパワーエレクトロニクスといい、電気を自在に制御する技術を扱っています。そのため、個人的にも電気自動車の世界的な動向に注視しており、比亞迪汽車(BYD Auto)のことももちろん知ってはいました。そして、中国のメーカーが販売台数で世界トップになったというニュースを初めて見たときは衝撃でした。しかし、今回深センに訪れるまでは、勉強不足で、深センに比亞迪汽車(BYD Auto)の本社があるということは知りませんでした。

電気自動車で世界トップを取ったことのある企業まで深センにあるのか・・・。

と、モノ作りの街、深センの底力を感じました。

せっかくですので、ここで、2017年と2018年の、メーカー別の世界における電気自動車の販売台数を見てみましょう。中国を橙色、日本を黄色、その他の国を青色としておきました。


The number of sales (EV, PHV, PHEV) in 2017
電気自動車の販売台数(2017年)

2017年における、メーカー別の電気自動車(プラグインハイブリッドも含む)の販売台数を見ると、第1位の比亞迪汽車(BYD Auto)を筆頭に、中国企業が目立つことが分かります。

というのも、上位20位のうち、
  • 中国企業:10社
  • 日本企業:3社
と、中国の企業の力は圧倒的です。

東アジアとして見ると、日・中・韓で14社なので、東アジアの圧勝であることも分かります。欧米の企業は焦っているのかもしれません。


The number of sales (EV, PHV, PHEV) in 2018
電気自動車の販売台数(2018年)

こちらの2018年における世界の電気自動車(プラグインハイブリッドも含む)の販売台数を見ても、2017年に第1位だった比亞迪汽車(BYD Auto)は第2位は転落しましたが、依然好調で、販売台数に至っては1年間で2倍以上に増えていることが分かります。

また、上位20位のうち、
  • 中国企業:9社
  • 日本企業:3社
と、中国の企業の依然圧倒的な強さを誇っていることが分かります。

また、恐ろしいことに、日産自動車、トヨタ自動車、三菱自動車の3社の販売台数を合計しても、世界第2位の比亞迪汽車(BYD Auto)1社に及ばないことも分かります。


なお、2017年に比べて、日産自動車や三菱自動車は販売台数を大幅に増加させましたが、一方でトヨタ自動車は販売台数を落としてしまっています。

ガソリン自動車やハイブリッド自動車で覇権を取っていたことと、電気自動車で覇権を取ることとでは、やはり違うのでしょうか。


交通を本気で電動化させる覚悟を垣間見て・・・


本記事では、深センの交通の電動化について、まとめられる範囲でまとめてみました。私自身の調査不足もあり、実際にこれらの電気自動車や電動自転車などが、どのように運用されているのかなど、不明点はまだまだたくさんあります。しかし、今回の深セン視察で、日本ではまだ行われていないような刺激的な挑戦が、中国では確実にたくさん始まっているという様子は見て取れました。

今後は、自動車の電動化、電気自動車の普及がさらに進み、公道における自動運転なども含めた、交通システムの抜本的な改革なども進んでいくのかもしれません。このような雰囲気の深センですから、大規模な実証試験も既にどこかで始まっていてもおかしくありません。

自動車は事故があった時に多大な被害をもたらします。そのため、当然ながら、安全性を担保して作っていくということには慎重にならざるを得ないでしょう。しかし、一方で、頭を柔らかくして、新しい取り組みに挑戦し続けて行かないと、何もかもが時代遅れになり、世界の土俵で勝負できなくなってしまいそうです。深センに行ってみて、深センの街全体が大きな実験室のようになっており、時代がどんどん進んで行っていることを感じました。

Battery charging space for EV
街で見かけた電気自動車の充電スペース


繰り返しますが、中国全体のことは分かりませんが、少なくともここ深センにおいては、新しい挑戦を受け入れる土俵がありました。挑戦というのは勇気がないとできないことです。ですから、自身が火種となって周りに火を付けて突き進んでいくと同時に、周囲が新しい挑戦を積極的に受け入れ、励ましてくれるような経済的なサポートも常に必要です。この周囲が受け入れ、経済的にサポートをしてくれるという部分が深センは強いのでしょう。正直、うらやましいと感じました。

生活の質そのもので言えば、東京を始めとした日本の都市の方がまだまだ高いでしょう。

しかし、創造的に生きていくという点、そして経済が発展していくという点においては、政府や市民レベルで、このように新しいことに挑戦できる雰囲気がある深センの方が楽しそうだと思えました。

この街に身を置かずとも、頻繁に訪れて、刺激を得ることは、少なくとも私にとっては意義のあることだと感じました。

深セン、本当に奥が深い街です。



Visit Shenzhen! 深セン視察(2019年04月)まとめ
https://omg-kmg.blogspot.com/2019/05/visit-shenzhen-201904.html